ロードセル入門

第2章 ロードセルの測定原理

01. ひずみゲージとは

力を電気信号に変換するために、ロードセルにひずみゲージと言うセンサーを貼り付けます。

001. ひずみゲージの歴史

金属はその物性として圧力及び張力によって電気抵抗が変化します。このような現象はかなり昔から知られていました。1878年に Tomlinson が単位抵抗あたりの抵抗の増加分(ゲージ率と言う)を定量的に測定しました。

002. ひずみゲージ

多くの金属は機械的な伸び、または縮みを与えると、その電気抵抗は変化します。

金属の伸縮と抵抗値イメージ画像

ひずみゲージはこの原理を応用し、抵抗変化からひずみを検出しようとするものです。

ひずみゲージイメージ画像

ロードセルは起歪体にひずみゲージを貼り付けて制作します。
その際、起歪体の中で一番ひずみが大きく発生するところにひずみゲージを貼付し、ひずみを効率的に検出します。

ロードセルイメージ画像

ひずみゲージの抵抗変化とひずみの間には直線関係が成り立ち、次のような式が成立します。

ひずみゲージの抵抗変化とひずみ

ゲージ率 K は使われる金属箔の種類によって異なります。
ひずみゲージによく使われる銅ニッケル合金(コンスタンタン)の場合は、約2程度の値となります。

ひずみゲージの抵抗変化とひずみ

02. 起歪体とは

起歪体は文字通り外力によりひずみを発生させる部品です。力を起歪体に加えると起歪体にひずみが生じ、起歪体に貼り付けてあるひずみゲージの抵抗値が変化します。

これを利用して力を電気的出力に変換するわけです。ロードセルの性能を向上させる上で起歪体の特性が大変重要となります。起歪体に要求される特性にはつぎのようなものがあります。

  1. クリープ(物体が力を受け変形が時間とともに増化する現象)の少ないこと。
  2. 直線性が広い範囲で保証される、比例限度の高い材料であること。
  3. 経年変化の少ない材料であるとともに、残留応力による形状変化を起こさないこと。
  4. 耐衝撃性が高いこと。
  5. 加工性が良いこと。

このような材料として一般にはニッケルクロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などがあります。

001. ひずみの生じ方

物体は外力を受けると変形します。
物体が外力を受けて変形すれば、物体を構成する各分子間には分子力が作用し、外力による変形を妨げようとする内力が生じます。

物体が受けている外力と物体の内部に生じる内力がつりあうと物体の変形は停止します。その時、物体の断面に生じる単位面積当たりの内力を応力と言います。

図 2.4をご覧ください。

応力イメージ画像

ゲンコツで頭をなぐられています。
ゲンコツは外力、頭は物体になります。外力であるゲンコツの力に対して頭のなかで応力が生じます。ゲンコツの外力を P(N) だとしても頭の単面積を A(m²) だとしたら、応力σ(シグマ)は次のようになります。

応力計算式

002. ひずみ

物体が外力を受けて変形した時、元の寸法に対しての変化分を単位長さ当たりで表したものをひずみといいます。辞書では、物体に外力を加えたときに生じる、のび・ちぢみ・ねじれなどの変化の割合をひずみと表しています。

図 2.5をご覧ください。

ひずみイメージ画像

頬を手で引っ張っています。
元の頬の長さを L 、引っ張った後の長さを △Lだとします。この場合ひずみ ε(イプシロン) は次のようになります。

ひずみ計算式

ひずみは元の長さと伸び量の比なので単位はありません。

003. ポアソン比

物体を引っ張ると長くなると同時に細くなります。
外力と同じ方向のひずみを縦ひずみ(ε1)、直角方向のひずみを横ひずみ(ε2)といい、この二つの値の比率をポアソン比 ν(ニュー)といいます。
多くの材料が0.3近辺の値を表します。

ポアソン比

外力に対して縦ひずみになる伸びは(+)、横ひずみになる縮みは(-)の極性を持ちます。

004. 応力とひずみの関係

物体に加える外力を徐々に大きくしていくと、始めは物体に生じる応力に対しひずみも直線的に変化しますが、応力の大きさがある限度を超えると直線関係が成立しなくなります。
この、ある限度の事を比例限度、弾性限度あるいは降伏点と呼びます。

応力が比例限度以下であれば応力とひずみの関係は直線であるので、ひずみから直ちに応力を知る事が出来ます。

応力とひずみの関係

比例限度以下での応力とひずみの直線関係をフックの法則と言います。

フックの法則が成立している範囲を弾性域、成立しない範囲を塑性(そせい)域といいます。
塑性(そせい)域内では外力を取り除いても物体の変形はもとに戻らず、ひずみは残ってしまいます。残ったひずみのことを永久ひずみ、あるいは残留ひずみと言います。

クリープとは?経年変化とは?

03. 接着剤

ひずみゲージを起歪体に接着するための接着剤は起歪体のひずみをゲージ素子へと正確に伝達しなければなりません。接着剤に要求される特性は次のようになります。

  1. 接着強度が温度、湿度にたいして十分あること。
  2. 絶縁性が温度、湿度にたいして十分あること。
  3. 硬化時の吸収率が小さいこと。

ひずみ測定分野で使われている各種の接着剤を以下に表します。

  1. 溶剤蒸発形
    K-4、デッコなどの溶剤蒸発型接着剤は常温で変化しペーパーゲージや多孔性ベースゲージを簡単に取り付けができます。
  2. 接触硬化接着剤
    CY-10、イーストマン910など、ツアノアクリレート系接着剤、数分でゲージの取り付けができます。
  3. エポキシ接着剤
    接着圧力と硬化時間は各種エポキシによって異なります。
  4. フェノール接着剤
    フェノール「ベークライト」接着剤は比較的高い接着圧力と長い硬化時間が必要な熱効果形のタイプの一つであり、負荷状態の下で長期的に安定します。

ロードセルと接着剤について

04. 起歪体の形状とひずみの生じ方

起歪体は様々な形状がありそれぞれの特性も異なります。
そのなかで一般的なものはコラム型、ロバーバル型、シャー型、リング型、ダイヤフラム型の5種類です。
この5種類の特徴とひずみの生じかたを調べて見ましょう。

001. コラム型(円柱型)

コラム型ロードセルは図 2.7のような形になります。
この円柱を F の力で圧縮すると、ひずみゲージ 1 は縮み、ひずみゲージ 2 は伸びます。

ひずみゲージ 1 のひずみを ε1、ひずみゲージ 2 のひずみを ε2 だとしたらひずみゲージ 1 とひずみゲージ 2 の関係は ε2 = με1 になります。(μ:ポアソン比)
1のひずみゲージに見られるひずみは

起歪体の形状とひずみの生じ方 コラム型(円柱型)イメージ画像

コラム型は構造が単純であり、大容量のロードセルでもサイズを小さくできるという特徴がありますが、小容量には向いていません。
一般的な測定範囲は 2~300t になり、引張圧縮どちらでも使えます。

002. ロバーバル型(ダブルビーム型、平行ビーム型)

ロバーバル型は図 2.8 のような形になります。

ロバーバル型ロードセルに力(K)を加えるとひずみゲージ1は縮み、ひずみゲージ2は伸びます。
ひずみゲージ1に見られるひずみは

起歪体の形状とひずみの生じ方 ロバーバル型(ダブルビーム型、平行ビーム型)イメージ画像

この構造は高精度のロードセルに用いられます。
このタイプの最大の特徴は、はかりのメカニズムを使わずに使用しても四隅誤差のないはかりを作ることができることです。
通常商業はかり、卓上台はかりなどに使われています。一般的な測定範囲は 1kg ~ 1t です。大容量のロードセルには向けません。

003. シャー型(せん断型)

シャー型のロードセルは図 2.9 のような形になります。
ひずみゲージはこのロードセルの中立軸上に 45°の角度で貼られています。

起歪体の形状とひずみの生じ方 シャー型(せん断型)イメージ画像

このタイプのロードセルはロバーバルタイプに比べ同容量であれば小型にできるという特徴があります。
また横荷重に対する耐性が大きく高精度化しやすいのも特徴になります。
一般的な測定範囲は 100kg ~ 20t です。

004. リング型(円環型)

リング型(円環型)ロードセルの起歪体は図 2.10 のような形状をしています。
高精度のロードセルタイプです。
容量は中容量のものが多く 500kg~20t の範囲が一般的です。

起歪体の形状とひずみの生じ方 リング型(円環型)イメージ画像

このタイプのロードセルはロバーバルタイプに比べ同容量であれば小型にできるという特徴があります。また横荷重に対する耐性が大きく高精度化しやすいのも特徴になります。一般的な測定範囲は 100kg ~ 20t です。

005. ダイヤフラム型

ダイヤフラム型ロードセルは円型のロードセルであり断面は図 2.11 のようになっています。このタイプは高さを低くできるのが最大のメリットであり横荷重耐力もあります。しかし精度は100分の1の程度しか出ません。

起歪体の形状とひずみの生じ方 ダイヤフラム型イメージ画像

05. ロードセルの基本回路

ロードセルに力が加わると起歪体にあるひずみゲージの電気抵抗値が変化します。この抵抗値の変化を電圧で測定します。
ひずみゲージの抵抗変化は非常に小さいので一般的には図 2.12 のようなホイートストンブリッジ回路で組みます。

ロードセルの回路イメージ画像

001. ホイートストンブリッジ

ホイートストンブリッジは、微小な抵抗変化を検出するのに適した電気回路で、ひずみゲージの抵抗変化もこの回路を用いて測定します。ホイートストンブリッジは図 2.12 のように四つの抵抗を組み合わせてできています。

起歪体に抵抗値 R1R2R3R4 のゲージが図の位置にはりつけられブリッジを組んでいます。
荷重(力)を加える前の出力電圧はオームの法則とキルヒホッフの電流連続則により

ロードセル 力を加える前の出力電圧計算式

となります。
ブリッジの4辺に接続したゲージがひずみをうけて各辺 R1R2R3R4 がそれぞれ微小変化して +ΔR1-ΔR2+ΔR3-ΔR4 のひずみが発生したとしたら出力電圧は

ロードセル ひずみが発生した場合の出力電圧計算式

となります。
ここで R1R2R3R4R であり、ロバーバル構造の場合は、

ロードセル ロバーバル構造の出力電圧計算式

となり、出力電圧(Δе )はひずみ( ε )に比例します。

06. 各種補整回路

ロードセルの基本回路は図 2.12 で説明しましたが実際には図 2.13 のような回路が使われています。

ロードセルの回路イメージ画像2

様々な抵抗が取り付けられています。これはロードセルが仕様を満足する様に出力感度調整や温度調整などをするための物です。
これから各種抵抗の目的と種類について調べてみましょう。

R1~R4はひずみゲージでR5R11は出力電圧の温度補償用抵抗です。
温度による出力電圧への影響は主として起歪体の弾性係数の温度変化(鉄系では -0.003%/℃、アルミニウム合金系材料は-0.07%/℃程度)とひずみゲージのゲージ率の温度変化に原因があります。

ロードセルの出力電圧に含まれる温度による誤差要因を補償するためにR5へ温度により抵抗値の変化する素子を接続します。起歪体のヤング率とひずみゲージのゲージ率の温度特性による出力の変化量に相当する分の電流を調整しています。温度検知抵抗素子には普通純ニッケルや銅のように大きな正の抵抗温度係数をもつものを使用します。R11は固定抵抗でありR5の直線性などの調整を行う場合に使います。

温度補償抵抗イメージ画像

R10R12は出力電圧の非直線性の補正抵抗です。
大容量の計量システムではしばしばコラム型起歪体のロードセルを使用しますが力によって起歪体の断面積が変化するために直線性誤差が発生します。そこでひずみゲージとは別に起歪体の応力を検知する素子をつけ、ブリッジ回路の電流を自動的に調整し、ロードセルの出力電圧の直線化補償をします。R10は半導体ゲージを使用するのが一般的です。R12は固定抵抗でありR10のリニアライズなどの調整を行う場合に使います。

R8はゼロバランス調整用の抵抗です。 R1R2R3R4 の場合は出力電圧はゼロとなりますが実際はR1~R4は±0.5Ω程度バラツキがあるのでゼロ点出力は、ばらばらの値になります。そこでブリッジ内に適当な固定抵抗をいれてゼロバランスを一定値にしています。

R9は温度による零点の変化を調整するための抵抗です。ロードセルの零点による変化は起歪体の熱膨張や収縮に原因があります。この誤差をなくすために自己温度補償ゲージを使います。周囲温度が変化してもこれらのゲージで誤差が少なくなるようにしています。補償抵抗は温度係数の大きな抵抗を使います。

R6は出力感度調整用の固定抵抗であり、R7は入力抵抗調整用の固定抵抗です。

各種補正を行っています