情報マガジン『WAY』

エー・アンド・デイ情報マガジン『WAY』

VOL.23 2020.FEBRUARY マツダ株式会社様

ユージングシーン
エンジンに装着した
A&D製 油圧可変動バルブ

A&D製 油圧可変動バルブ

「ガソリンエンジンで電気自動車やハイブリッド車と同等の燃費を実現したい」
MAZDAの新エンジン開発のために、A&Dのエンジニアリングサービスと油圧可変動バルブをご採用いただいています。

マツダ株式会社 パワートレイン技術開発部様にインタビュー

低燃費で低公害な燃焼ができる新しいガソリンエンジンの心臓部となる「HCCI燃焼(注1)」。
地球環境貢献を目的とした新技術に挑戦し続けるマツダ様の社風とポリシーのもと、いままでにない乗用車用エンジンの開発が進められています。

インタビューいただいたマツダ株式会社パワートレイン開発本部 パワートレイン技術開発部 首席エンジニア 博士(工学) 山川 正尚様の画像

マツダ株式会社
パワートレイン開発本部
パワートレイン技術開発部
首席エンジニア 博士(工学)
山川 正尚様

いままでのエンジンの半分ほどの燃料しか必要としないエンジンを開発中です。

インタビュアー 開発中のHCCI燃焼とは、どのような技術なのでしょうか?
山川様 いままで使用されてきたエンジンの燃焼は、点火プラグで着火して周囲の混合気に火炎の熱を伝えながら次々と燃焼させています。
これに対し、HCCI燃焼は、最初に混合気全体に熱を与えて圧縮、爆発させることで多点同時着火を生じさせる技術です。
インタビュアー どのようなメリットがあるのですか?
山川様 最大のメリットは、いままでのエンジンの半分ほどの燃料しか必要でなくなることです。
限りある地下資源の有効利用や燃費の改善と共に、低温で燃焼するため、有害排気ガスのNOx(注2)を出さない燃焼の実現も可能です。
インタビュアー すごい技術ですね。早く商品化していただきたいと思います。
山川様 この技術は1980年ごろに提唱され、これまでに多くの自動車メーカーや研究機関が技術開発に挑戦してきましたが、現時点ではまだ商品化に至っていません。最大のネックは、焼制御の難しさにあります。
HCCI燃焼を形成するエンジンの固有のハードはおおむね目処が立っていますが、クルマのさまざまな運転条件で安定してHCCI燃焼を成立させるための燃焼制御技術の確立が困難なのです。
インタビュアー その課題の解決のために、どうような取り組みをしていらっしゃいますか?
小山様 マツダではマツダ独自の燃焼解析技術に基づいた『燃焼予測制御』を実行することで、この難問題を解決し、HCCI燃焼の商品化を目指しています。

A&Dさんとの技術的コラボレーションにより、HCCI燃焼の実現に近づいてきました。

インタビュアー 新しいエンジンの実現に向けて、A&Dの技術スタッフが大変お世話になっています。
山川様 A&Dさんの技術スタッフの皆様のご協力に感謝しています。A&Dさんの社風なのか、技術に対してとても真面目で、とことん取り組んでいただいています。
A&Dさんの永年の計測技術をベースにしたご提案は、マツダにはない視点、発想なので、よいパートナーに巡り会うことができたと思っています。
インタビュアー ありがとうございます。具体的にはどのようなコラボレーションなのでしょうか?
山川様 燃焼予測を行う上で最重要と言ってもよい「吸気、燃焼室内、排気の過渡詳細情報」のうち、吸気と排気の過渡詳細情報の把握について、A&Dさんとマツダでこれまで2年間、共同開発を行ってきました。
おかげさまで、A&Dさん固有の吸気と排気についての精密計測技術と現象解析理論によって、多くの有益な情報を得ることができました。
インタビュアー 実験にA&Dの油圧可変動バルブもご採用いただいていますね。
山川様 燃焼予測制御を行うために、燃焼室内のガスをさまざまな状態に変化させて、その燃焼挙動を解析しています。
実際の過度運転を模擬したバルブの挙動も含め、さまざまな状態のガスをつくるために油圧可変動バルブを採用し、実験の効率化を図っています。

お客様が求める真のクルマの価値を、マツダがご提供していきたいと考えています。

インタビュアー マツダ様のエンジン開発の歴史はユニークですね。
山川様 そうですね(笑)。マツダはいままで、ロータリーエンジン、スカイアクティブエンジンといった独創的な商品を生み出してきました。これは単に新しい商品の追求という意味ではなく、お客様が求める真のクルマの価値をご提供しようとする姿勢の現れなのです。
インタビュアー HCCI燃焼の実現が待ち遠しいですね。これからもよろしくお願いいたします。
山川様 こちらこそ、よろしくお願いいたします。(笑)。
いままで培ってきたマツダの伝統的かつ独創的な発想や技術を、マツダの枠を超えた環境でさらに価値の高い技術に仕上げてお客様にお届けする。このマツダの社風とポリシーのもと、今後もA&Dさんとの技術的コラボレーションをさらに深化させ、2020年代半ばまでに実現させることを目標にしています。
インタビュアー 本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

(聞き手:株式会社エー・アンド・デイ 営業企画部)

お客様情報

マツダ株式会社
本社
広島県安芸郡府中町新地3-1
設立
1920(大正9)年1月30日
従業員数
単体:22,617名(出向者含む) 連結:49,755名
資本金
2,840億円
研究開発拠点
本社、マツダR&Dセンター横浜、米国、中国
生産拠点
国内:本社工場(本社、宇品)、防府工場(西浦、中関)、三次事業所
海外:中国、タイ、メキシコ、ベトナム、マレーシア、ロシア
販売会社
国内:220社 海外:140社
URL
https://www.mazda.co.jp/
マツダ 外観画像

お使いいただいているA&D製品

MBSim(Model Based Simulation)/ 自動車開発 計測・制御・シミュレーションシステム

エンジニアリングサービス

A&Dグループは、お客様にModel Based Engineering技術を効果的にご活用いただくため、ツールメーカーとしての視点に立ったエンジニアリングと計測サービスを提供したします。

  • 適合試験
    エンジン・T/M適合のためのエンジニアリングサービス
    車輌の最適化適合のためのエンジニアリングサービス(乗心地/振動/台上試験 等)
    最適化試験手法の検討・開発(単体・組立部品・車輌評価手法)
    (精密測定→モデル作成→台上試験・標準化 等)
  • モデル作成
    モデルの作成(車輌/実車走行からのモデル同定)
    モデル活用のコンサルティング(HILS:リアルタイム動作 等)
    導入設備の事前検討/評価/改造
  • 計測サービス
    単体・組立部品・車輌等のデータ計測及び解析
    ベンチマーク試験(単体・組立部品・車輌の性能比較)
油圧可変動バルブ

可変カムプロファイルの最適化業務の効率向上

  • 4弁独立任意バルブプロファイル(リフト量・作動角・中心角)の再現機能
  • 単気筒エンジンに対応
  • エンジン制御と油圧バルブ制御を同一GUIで実現
  • AD-PhoenixRTで同時に燃焼解析評価まで可能
  • AD-PhoenixRT・ORION・ANDOROMEDAで同時に燃焼解析評価まで可能