最小計量値について
USP(米国薬局方)
製薬業界では、天びんの管理方法の1つとして米国薬局方(United States Pharmacopoeia – USP)が標準として広く認知されています。
USP第41章〈Balances〉によれば 、サンプルが正確に計量されるためには、天びんがその使用範囲(operating range)において校正され、かつ下記の繰り返し性(Repeatability)及び正確さ(Accuracy)の条件を満たしている必要があります。
繰り返し性の条件
① 繰り返し性は、1つの検査用分銅を10回以上計量して算定すること。
② 計量された値の標準偏差を2倍し、それを使用した分銅の公称値で割った値が0.10%を超えないこと。
以上を式で表すと、
(10回以上の計量で得た標準偏差×2)÷ 使用した分銅の公称値 ≦ 0.10%
となります。そして、これにより天秤の使用範囲の下限が決まるため、
最小計量値 = 2000×繰り返し性(標準偏差)
と言いかえることができます。なお、
③ 標準偏差が0.41d(d=目量)未満だった場合は、0.41dに置き換えて計算すること
とされています。
最小計量値とは、定量分析を正しく行う上で、使用する天びんの測定誤差を考慮し、最低限必要となるサンプル量を指します。サンプル量が少なすぎると、それだけ計量値に占める測定誤差の割合が大きくなり、分析結果が信頼の置けないものとなってしまいます。
正確さの条件
① 検査には適切な分銅を用い、その分銅の値 と表示値の差が、分銅の値の0.10%以下であること。
② 検査用分銅の質量は、天びんのひょう量の5%~100%であること。
③ 検査用分銅の最大許容誤差もしくは校正の不確かさが、正確さ検査の許容限界(分銅値の0.10%)の1/3以下 であること。
最小計量値の例
最小表示 | 機種型名 | ひょう量 | 繰り返し性(標準偏差) | 最小計量値(参考値)注3) |
---|---|---|---|---|
0.001mg | BM-5 | 5.2g | 1.2μg 注1) | 2.0mg |
BM-20 | 22g | 2.5μg 注1) | 3.0mg | |
AD4212D-33 | 32g | 2.0μg 注1) | 3.0mg | |
0.01mg | BM-252 | 250g | 0.03mg 注2) | 20mg |
GH-252 | 101g(小レンジ) | 0.03mg | 24mg | |
GH-202 | 51g(小レンジ) | 0.02mg | 24mg | |
HR-202i | 51g(小レンジ) | 0.02mg | 24mg | |
GR-202 | 42g(小レンジ) | 0.02mg | 30mg | |
AD4212D-302 | 320g | 0.02mg 注4) | 20mg | |
0.1mg | BM-500 | 520g | 0.2mg | 120mg |
GH-200 | 220g | 0.1mg | 120mg | |
GR-200 | 210g | 0.1mg | 120mg | |
HR-250AZ | 252g | 0.1mg | 140mg | |
HR-250A | 252g | 0.1mg | 140mg | |
0.001g | GX-203A | 220g | 0.001g | 1.4g |
GF-203A | 220g | 0.001g | 1.4g | |
GX-200 | 210g | 0.001g | 1.4g | |
GF-200 | 210g | 0.001g | 1.4g | |
FZ-200i | 220g | 0.001g | 1.4g | |
FX-200i | 220g | 0.001g | 1.4g | |
0.01g | GX-2002A | 2200g | 0.01g | 14g |
GF-2002A | 2200g | 0.01g | 14g | |
GX-2000 | 2100g | 0.01g | 14g | |
GF-2000 | 2100g | 0.01g | 14g | |
FZ-2000i | 2200g | 0.01g | 14g | |
FX-2000i | 2200g | 0.01g | 14g |
注1)1gの分銅によるものです。
注2)100gの分銅によるものです。
注3)天びんが正しく調整(校正)され、良好環境下において、ひょう量5%の荷重にて実測した繰り返し性から求めた最小計量値(参考値)です。
注4)10gの分銅によるものです。
なお、お使いの天びんの最小計量値を決定するには、実際の使用環境にて測定する必要があります。
また、最小表示0.1㎎以下の天びんは、周囲環境や天びん自身の設定に影響されるため、良好な環境にすることが重要です。
分析天秤使用時の注意点
マイクロ(ミクロ)天びんをはじめとする分析天びんを使用するにあたり、1µg~0.1mgの精度を求めるためには、様々な誤差 要因の軽減や、様々な影響をおさえる必要があります。