計量技術情報 【計量豆知識 第8回】

1.はかる場所によって重さは変わる?

天びんやはかり、ウエイングインジケータ(計量指示計)を購入すると、取扱説明書に必ずキャリブレーション(校正)を行ってくださいと書いてあります。

天びんやはかりは出荷のときキャリブレーションをして正しい計量値が出るかどうか検査しますので、そういう意味ではキャリブレーション済みということになります。
ではなぜキャリブレーションしてくださいと書いてあるのでしょうか?

私たちが住んでいる地球は万有引力があり、すべてのものを地球の中心に引っ張っています。
引力の他に地球は自転しているため遠心力も働いています。遠心力は引力とは逆方向の力になります。地球の円周は約4万kmですので赤道のところは時速約1666kmで動いていることになります。東海道新幹線の時速が270kmですから地球は新幹線の約6倍のスピードで高速走行している計算になります。

引力は地球の上では、ほぼ一定ですが遠心力は北極、南極では最小、赤道付近は最大になります。
遠心力の影響で地球は赤道半径が極半径より約21km長い楕円になっています。

では実際に南極と赤道で重さをはかった場合、重さの違いはどれくらいでしょうか。
北極に近いフィンランドのヘルシンキの重力加速度(物体を自由落下させたとき、重力によって生じる加速度。)は9.819m/s2、赤道に近いシンがポールの重力加速度は9.781m/s2となります。
100kgのもので計算すると9.781(赤道)÷9.819(極地)= 0.996=99.61%となり、極地で100kgのものが赤道では99.61kgとなり差が390gということになります。

極地で100kgの分銅を載せたときに100kgと表示するはかりを赤道付近に運びそこで同じように計量をするとはかりも分銅も全く同じものであるにもかかわらず99.61kgと表示されます。これは先に説明した通り分銅が遠心力の影響を受け軽くなったためです。

因みに日本では北海道の札幌で9.805m/s2、沖縄の那覇で9.791m/s2の重力加速度になります。
計算すると9.791÷9.805= 99.86%となり札幌で100kgのものは沖縄では99.86kgで140gの差となります。

遠心力以外に計量に影響を及ぼすものとして高さ(標高)があります。標高があがれば引力の影響が少なくなりますので高い所に行くと重さは軽くなります。
計算式の説明は割愛しますが2×高さ(km)÷6400(地球の半径)で高さの影響を導き出すことができます。
例えばスカイツリーの第2展望台は450mありますのでスカイツリーの1階と比較した場合0.014%差が出ます。計算は(2×0.45(450mをkmに換算)÷6400(地球の半径km))=0.00014=0.014%、よって1階で100kgの物は450m上で計量すると99.986kgになり14g軽くなることになります。

余談ですが、地球の上空を回っている人工衛星も地球の引力の影響を受けています。高度が低ければ引力の影響を大きく受け、高度が高ければ引力の影響は小さくなります。例えば高度500kmの人工衛星は時速27,000kmで、高度1000kmでは時速26,000kmで、高度36,000kmの静止衛星(地球からみると常に一定方向にあるBSやCSの放送衛星)は時速11,000kmで地球の周りを回ることで引力と遠心力のバランスをとっており、地球に落ちてくることもなく地球から飛び出すこともなく上空にとどまっています。

本題のキャリブレーションに戻ります。いままでの説明は計量する場所でキャリブレーション(校正)を一切行わず、同じものを同じ計量器で場所を移動して計量した場合のことです。
計量した場所や高度で重さが違うと不都合がおきますよね、例えば1gあたり4,000円の金をフィンランドで100kg購入すると4億円になりますが、同じ金をシンガポールで同じ計量器(シンガポールでキャリブレーションをしていない)で計量した場合は99.61kgと表示され換算金額は3億9千8百万円となります、シンガポールで買った方が200万円お得ということになってしまいます。
しかし同一の金はどこに持っていっても本質は同じです、そのことを質量(物質が元々持っている量)と呼びます。
重量は引力と遠心力の合力ですので、場所により変わりますが、質量は不変です。
したがって計量器はどんな場所でも同じ値を示す質量計でなければなりません。

計量器を質量計にするために必要な作業がキャリブレーション(校正)です。

質量の基準となっている分銅を使い計量したい場所でキャリブレーションを行うと計量器は質量計になります。
キャリブレーションの方法は計量台の上に何も載ってない状態で0を記憶させ、その後分銅を載せ、その分銅の質量値を手動で入力し入力キーを押せば計量器はその分銅の重さを質量として記憶します。
計量を行う場所でキャリブレーションを行った計量器であれば100kgの物は常に100kgと表示されます。
フィンランドでもシンガポールでも現地でキャリブレーションを行えば同じ計量値を表示することができるようになります。

2.現地でキャリブレーション(校正)ができないときはどうする?

インジケータ(計量指示計)と荷重センサーのロードセルを組み合わせて計量器を製作する場合、計るものが大変重い場合があります。例えばトラックスケールの場合、積み荷はトラックごと計ることになります。
国内では計量範囲が20t、30t、50t、60tで大きさは3m(幅)×8m~15m(長さ)が多く、海外では長さ22m、130tのものもあります。

このような場合、数十tの分銅やその分銅を載せ降ろしするためのクレーン車などの機器を使用場所まで運搬するのは大変です。
そこで、役に立つのが重力加速度補正機能です。
重力加速度補正機能を有したインジケータであれば、製造場所でキャリブレーションを行い、製造場所と使用場所の重力加速度を入力すれば使用場所で の分銅校正を行わなくても計量器(質量計)として使用することができるようになります。

ただ重力加速度補正機能を有したインジケータとそうでない機種があり、重力加速度補正機能がある機種の場合、取扱説明書には重力加速度マップを記載しています。