シリーズ 『開発者の思い』 第1回

ピペット用機器の開発 (第一設計開発本部 第5部出雲直人)

2010.04.12

(容量テスター:AD4212B-PT/リークテスター:AD1690について)

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 ピペット検査用として容量テスターとリークテスターの販売を開始しました。

 容量テスターPTシリーズは欧州で展開されているピペットの校正事業を参考としており、容量の検証に天びんを使用した重量法を採用しています。この2つの新製品によりピペットの使用現場でのリークテストと吐出容量測定による日常管理を新たに提案しています。特にリークテスター:AD1690は簡単にピペットのピストン部周辺を含むリーク判定を可能とし、ピペットの使用者が使用の可否を即座に判断でる世界初の商品となりました。単純な機能を持つAD1690ですが、使用者にとっては不安を解消できる利用価値の高い製品になったと思います。

 A&Dは会社創設以来、現在まで30年以上にわたり電子天びんの開発を続けています。現在では天びんの技術を応用して水分計、粘度計などを製品化し、水分率、粘性などの物理量測定の裾野を広げる事に努力して来ました。今回はピペットの吐出容量測定と言う新しい機能を持つ機器開発が焦点となりました。測定される質量から容量を求めるには、被測定液体の密度を事前に決める必要があります。通常ピペットの容量確定には純水を利用しており、その背景としては使用される液体の物性が明確となっている事が要求されます。また、質量と密度の変換係数は“Zファクター”と呼ばれています。

 今回の製品開発では ①Zファクターの計算、②天びん感度として1μg(1nL)が必要:マイクロピペットと呼ばれる最も精度の高いピペットでは最小機種で定格が2μLとなり、その機器での最小検査量時には1nL(1μg)表示が必要、③容量測定中には水の蒸発を抑え、かつ操作性を損なわない手法の提案が必要の3点が大きな開発課題となりました。特に表示1μgはA&Dの天びんでは過去に自社での製品化例が無く、また異なる使用現場でのピペット校正では、持ち運び可能な小型の天びんによるμg表示が不可欠となりました。この問題を解決するのに時間を要しましたが、既存の生産ライン用天びんAD4212Bシリーズで得られた10μg表示をもう一桁出す事で実用上の課題を解決しました。

 この背景には常に計量範囲内すべてのエリアでの直線性が要求され、ある程度の時間を、安定して計量結果を表示させる必要のある天びんとは異なり、特に微少容量の計量時は短時間で質量比較器:マスコンパレータ相当の感度が優先される事情があります。今回Zファクター計算用ソフトと表示の安定マークを検出し短時間で計量結果を決める専用ソフト:自動取り込みソフトを搭載し、1μg(1nL)の安定取り込みと再現性の確保を実現しました。また蒸発防止案としてはピペットチップ部のアクセスが容易で、容器内の水の蒸発を受動的に制御できる独自の湿度保持容器を開発し、標準付属品化する事で計量時の不確かさを低減しました。未だ微小な容量計測技術は市場に根付き確定すると言える状況には至っていません。初めて市場に提案したリークテスターと容量テスターが、ピペットの使用現場での日常管理手法として利用され、ISO/GLP規格やSOP対応、しいては研究段階での品質と生産性向上に役立つ手段となる事を望んでいます。