情報マガジン『WAY』

エー・アンド・デイ情報マガジン『WAY』

VOL.6 2017.FRBRUARY 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 植物生存システム分野様

ユージングシーン
分析天びん BM-252
天びん環境アナライザー AD-1691

分析天びん BM-252と天びん環境アナライザー AD-1691 製品画像

~植物と藻類が地球を救う!~
落ち着いて重さを量れる環境にしただけで、研究の悩みが一つ解決できました。

東京大学大学院 植物生存システム分野 河野研究室様にインタビュー

化石燃料の枯渇や地球温暖化対策の一つとして、微細藻類由来のバイオ燃料が注目されています。 2008年に発表された「グリーン・ニューディール政策」(注1) が脚光を浴び、世界中でバイオ燃料の研究が本格化しました。 そして、2017年、アメリカでの新政権発足により、微細藻類の研究に新たな発展が期待されています。

東京大学大学院の河野研究室様のバイオ燃料の研究に、A&D製の分析天びんと天びん環境アナライザーをお使いいただいています。

インタビューいただいた東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 植物生存システム分野様の画像

東京大学大学院
右から:
先端生命科学専攻
植物生存システム分野
教授 理学博士
河野 重行様
特任研究員
博士(生命科学)
竹下 毅様
技術補佐員
越智 奈津子様

バイオ燃料とは具体的にどのようなものですか?

インタビュアー まず、研究の目標を教えてください。
河野教授 一言でいえば、微細藻類を利用した大量培養系の確立が目標です。我々はこの研究を実際の物質生産に結びつけたいと考えています。
インタビュアー クロレラ(注2) がバイオ燃料として期待されているのは、なぜでしょうか?
竹下先生 アメリカのバイオ燃料は今でもトウモロコシが主流です。食糧価格の高騰や耕地転用などが一時期社会問題になりましたが、今は沈静化しているようです。しかし、藻類は穀物など植物に比べて単位面積あたりの生産性に優れ、農業に適さない土地でも栽培可能なので、バイオ燃料の有望な候補の一つになっているのです。
河野教授 2011年6月のパリ国際航空ショーにおいて、フランスの大手航空機メーカーがパリから東京まで2時間半で飛行できる超音速旅客機を開発中であると発表して注目されたこともあります。この超音速ロケット旅客機『Zehst』は、ゼロエミッションが特徴で、海藻由来のバイオ燃料を使う計画とのことでした。
インタビュアー 藻類からつくった燃料で、航空機が飛ぶのですか!?
竹下先生 『Zehst』は、2020年までに試作機、2050年ごろに運用開始といわれていますので、そのころまでには藻類バイオ燃料がメジャーになっていると期待されています。2020年の東京オリンピックに向けて、2018年にはジェット燃料の生産にめどをつけたいと言っている日本企業もありますね。

どうしたらだれでも同じように量れるのか?量るたびに計量値が違う場合に、どのように判断すればよいのかわからない。

インタビュアー A&D製の分析天びんを、どのようにお使いいただいているのでしょうか?
河野教授 抽出できるオイル量の確認のために使用しています。専用のアルミ製容器にクロレラの有機溶媒抽出物を入れ、蒸発させたあと容器に残った残留物がオイルです。何mgのクロレラのサンプルから、どのくらいの量のオイルが抽出できるか量るために、高精度の天びんが必要なのです。
竹下先生 天びんで何かを量るということ自体は単純作業なので、最初はあまり神経を使わなくてもできると思っていたのです。ところが、量る人、量る日によって計量値が違うことがあったので悩んでしまいました。
河野教授 その悩みの解決のために、A&Dさんの営業の方に研究室まで来ていただいて助かりましたね(笑)。温度や湿度、エアコンからの風など、計量値の再現性を高めるためには、落ち着いて量れる環境づくりが大切であることを教えていただきました。具体的には、まず天びんを設置する部屋。空気の動きが少ない部屋を探しました。それと、天びんのウォーミングアップ。電源を入れて1時間経ってから計量するようにしました。
竹下先生 あとは天びんに接続する環境アナライザー AD-1691がとても効果的でした。この装置のおかげで繰り返し測定が自動で処理できます。タッチ画面なので操作も簡単ですし、「あとからデータをパソコンに入れて」ではなく、オンタイムでパッとデータが出てくるので、実験が短時間で終わるようになりました。
河野教授 今ではAD-1691を基準にして、一人ひとりがセルフで管理できるようになったことと、操作者の技術向上の相乗効果によって、計量値のバラツキがほとんどなくなりました。

人間社会の安寧ばかりでなく、全生命体の繁栄に資することが、21世紀の生命科学の最も大きな課題。

インタビュアー 藻類のバイオ燃料化に向けての課題について教えてください。
竹下先生 穀類や園芸作物と同じように、大量生産が可能な株を育種(注4)する必要があります。今までは、微細藻類には育種という発想はなく、ゲノム(注4)もほとんど解読されていませんでした。
河野教授 我々の研究では、園芸作物の品質改良で実績のある重イオンビームを微細藻類に照射して、形態に関する定量的データを集め、微細藻類に特化した革新的で先端的な、全ゲノム情報を基盤とした育種法の確立をめざしています。
インタビュアー この研究が我々人類に与えてくれる恩恵が、とても大きいと感じます。
竹下先生 人類だけではありません。地球は人類と他の生命体との共存系です。人間社会の安寧ばかりでなく、全生命体の繁栄のために貢献することが、21世紀の生命科学のもっとも大きな課題だと考えています。
河野教授 私はこの研究を通じて、人類はもとより、地球上の全生命が直面している諸問題を社会との関わりのなかで認識し、生命科学を武器にそれらの諸問題の解決にあたろうという、意欲あふれる研究者を育成したいと思っています。
インタビュアー 本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

(聞き手:株式会社エー・アンド・デイ 販売促進部)

お客様情報

東京大学大学院 新領域創成科学研究科
所在地
千葉県柏市柏の葉5-1-5
大学創設
1877年
先端生命科学専攻設置
1998年
東京大学大学院の外観画像

お使いいただいているA&D製品

イオナイザー内蔵分析天びん BMシリーズ
  • ひょう量220g~520g、最小表示0.01mg~0.1mg
  • 最大分解能 2500万分の1を実現
  • 静電気の問題を解決
イオナイザー内蔵分析天びん BMシリーズの製品画像
天びん環境アナライザー AD-1691
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天びん環境アナライザー AD-1691の製品画像