情報マガジン『WAY』

エー・アンド・デイ情報マガジン『WAY』

VOL.4 2016.NOVEMBER 群馬大学 理工学部 井上研究室様

ユージングシーン
剛体振り子型物性試験器RPT-3000W

剛体振り子型物性試験器RPT-3000W 製品画像

電子デバイス(注1) の高性能化や多様化にともない、 導電性接着剤に対する要求性能がますます高まっています。

群馬大学理工学部 井上研究室様にインタビュー

パソコンやスマートフォンだけではなく、すべてのモノがインターネットでつながるモノのインターネット「IoT」。
未来社会の実現に向けた研究開発が活発に進められています。
このIoT社会の実現のためには、信頼性の高い電子実装技術が不可欠。
なかでも機械的信頼性と電気および熱伝導特性を兼ね備えた微細な接続技術は、重要な基本技術の一つといえます。

2010年に若手研究指導者育成を目的に創設された群馬大学理工学部「先端科学研究指導者育成ユニット」。
そのユニットの中核の一つである井上研究室様は、エレクトロニクス製品の開発に必要な導電性接着剤を研究されています。
A&Dの剛体振り子型物性試験器を研究にお使いいただいているとのことで、お話を伺いました。

インタビューいただいた群馬大学 理工学部 井上研究室様の画像

群馬大学
左:
理工学部
先端科学研究指導者育成ユニット
講師 井上 雅博様
右:
理工学部 機械知能システム理工学科
井上研究室
学部4年 瓦井 健太様

導電性接着剤の新しい材料設計指針の確立のために、学術的な取り組みが必要。

インタビュアー 導電性接着剤は文字通り、電気を通す接着剤ということでしょうか?
井上先生 そうですね。電気を通す性質を利用して、従来の「はんだ」の代替品として使われることが多い接着剤です。
有機高分子バインダ(注2)に炭素系フィラー(注3)を分散させることで導電性を付与したもので、おもにエレクトロニクス機器などの電子部品を基板に搭載する際の導電性接続に用いられています。
インタビュアー エレクトロニクス機器の進化のために、導電性接着剤はなくてはならないということですね?
井上先生 導電性接着剤だけではなく、はんだや金属ナノ粒子などを用いた微細接合技術がなければ製品にはなりません。エレクトロニクス機器を生産する技術は日々高精度化しています。それにともない、接着剤に対す る要求性能もますます高まっています。そこで、実装プロセス開発・信頼性評価に使用されている材料の開発においても、しっかりした学術的基礎に基づいた研究開発が必要になってきました。

「いままでの理論では解明できない」ということが、わかりつつあります。

インタビュアー 具体的には、どのような研究をしていらっしゃるのでしょうか?
井上先生 いままでは導電性接着剤が硬化収縮して、粒子と粒子が近づくことで電気伝導特性が発現するという考え方が、いわば定説とされていました。しかし、研究が進むにつれて、いままでの理論では説明できない現象があることがわかってきたのです。実は、導電性接着剤の電気伝導のメカニズムは、まだ完全には解明されていないのです。
インタビュアー なぜ、完全に解明されていないのでしょうか?
井上先生 一言でいうと、それを調べる手法が確立していないということですね。A&Dさんの剛体振り子型物性試験器RPT-3000Wに出会うまで、調べるための装置もわからなかったのです。
インタビュアー それまでは、どのような装置で試験をされていたのでしょうか?
井上先生 硬化挙動はDSC(注4) で調べていました。また、電気伝導はヒーターの上にサンプルを置いて測定していました。しかし、それぞれが独立した試験なので、これらの試験の関係性がわからなかったのです。困ったなぁ…と思っていたところ、RPT-3000Wを使うことにより、その関係性が解明できたのです。
インタビュアー この試験器のどのようなところがお役に立てたのでしょうか?
井上先生 RPT-3000Wは、基材上での接着剤の硬化挙動を調べることができる唯一の試験器といえます。また、熱分析は反応熱を調べるだけで、接着剤中の高分子構造の発達挙動を直接的に調べるわけではありません。その点、RPT-3000Wは硬化反応過程における高分子構造の発達挙動を観察しながら、他の測定を組み合わせることができる構造になっています。
インタビュアー フレキシブルに対応できる構造ということでしょうか?
井上先生 そうです。RPT-3000Wはそれ単体でも有用な情報が得られる試験器ですが、試験者のアイデアしだいで複合的に、いろいろな試験に発展させることができますね。

特性を科学的に説明できない材料は、使ってもらえない。

インタビュアー 今後の研究方針を教えてください。
井上先生 接着剤のようなペースト材料の評価のなかで最も重要な評価項目の一つは、物質の溶液から固体への乾燥・硬化過程の化学的・物理的特性の発達挙動を追跡することです。混合物である材料のメカニズムを完全に解明することは困難ですが、ここをめざしたいと考えています。
インタビュアー メカニズムがわからないと、どのようなことになりますか?
井上先生 さまざまな特性を科学的に説明できない材料は、使ってもらえません。新しく開発された材料の信頼性は、そのメカニズムの解明によって検証しなければなりません。信頼できる新しい材料をつくれなければ、新 しい製品もつくれません。このような分野は、もともと日本が得意とすることなので、さらに高めていきたいと考えています。
インタビュアー 新しい材料の開発のために、RPT-3000Wが果たす役割は大きいと考えてよろしいでしょうか?
井上先生 RPT-3000Wには期待しています。より高度なエレクトロニクス製品を開発するために、新しい材料設計指針の確立が望まれています。私はこの試験器を用いた自由滅衰振動法による粘弾性特性評価と電気抵抗測定を組み合わせることで、新しい評価方法を追求したいと考えています。そこに、樹脂系の機能性接合材料の開発に新しい時代が到来する可能性を感じています。
インタビュアー 本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

(聞き手:株式会社エー・アンド・デイ 販売促進部)

お客様情報

群馬大学 理工学部 先端科学研究指導者育成ユニット
所在地
群馬県桐生市天神町1丁目5-1
大学設置
1949年
創立
1873年
総在学生数
6,475名(2015年5月現在)
群馬大学の外観画像

お使いいただいているA&D製品

剛体振り子型物性試験器 RPT-3000W

物資の溶液から固体への硬化、乾燥工程での諸物性の経時変化の評価が可能な物性試験器

  • 振り子の自由減衰振動で、試料の物性や粘性情報を評価
  • エッジタイプと丸棒タイプの2種類の振り子を使い分け、支点部で振らせて測定
  • 実用基材上での測定が可能
剛体振り子型物性試験器 RPT-3000Wの製品画像

剛体振り子型物性試験技術が、国際標準規格ISO12013-1、ISO12013-2に採択されました。

規格の内容:剛体振り子による塗料と塗膜の物性測定方法

  • ISO 12013-1:塗料の硬化開始温度の測定方法
  • ISO 12013-2:塗膜の熱的性質(Tg、硬度)の測定方法

PRT-3000Wは幅広い分野にわたる材料の評価に活用できます。

塗料/接着剤
  • 硬化温度と硬化時間の評価
  • 硬化剤による硬化性、固化物物性評価
  • 塗装ラインの設計データ
  • 塗膜や薄膜(50nm)の品質評価
  • 付着性、歪性等の評価
  • 耐候性劣化度早期予測
  • その他
化粧品/医薬品
  • マニキュア、マスカラの乾燥性と表面物性評価
  • パックやパップ剤の乾燥性と粘着性、弾性の評価
  • 毛髪などの潤滑性や洗浄性の評価
  • コンタクトレンズの乾燥性評価
  • その他
食品
  • ゼラチンや寒天等のゲル化特性の評価
  • 食品等の官能的性能の定量的評価
  • その他
繊維
  • 繊維の物性評価
  • 布の風合の評価
  • その他
プラスチック
  • 表面物性の評価
  • フィルムの物性評価
  • ハードコートの硬化、表面および内部の物性評価
  • その他
印刷
  • 被印刷物上でのインキ物性評価
  • インキの乾燥性評価
  • ローラーへの転写性の評価
  • その他
電子/電気
  • 電池材料(電極膜、スペーサー、その他)の物性評価
  • 光ファイバー、光フィルターの硬化性、物性評価
  • 導電ペーストの硬化特性評価
  • ハンダの溶融・固化特性評価
  • プリント基板の硬化および物性評価
  • その他
その他
  • コンクリート、アスファルト等の物性評価